パンフレットや名刺、ポスターなど、日頃目にする印刷物には、ただ印刷するだけではない様々な工夫が凝らされていることをご存知でしょうか? 実は、「印刷加工」と呼ばれる工程によって、印刷物の見た目や手触り、耐久性、さらには機能性まで大きく向上させることができるのです。
「会社のパンフレットを他社と差別化したい」「名刺に高級感を出したい」「イベントチラシを印象的にしたいけど、どんな加工があるのか分からない」といったお悩みをお持ちの方もいるかもしれません。多種多様な加工オプションの中から、どれを選べばいいのか迷ってしまうことも少なくないでしょう。
この記事では、そんなあなたの疑問や悩みを解決するために、印刷物の主要な加工オプションについて徹底的に解説します。
具体的には、以下の内容を分かりやすくご紹介します。
- 印刷加工の基本的な役割と目的:なぜ加工が必要なのか、その重要性を理解できます。
- 印刷物の印象を大きく変える「表面加工」の種類と特徴:光沢感やマット感を与えるPP加工やニス加工、さらには手触りで魅せる特殊加工まで、様々な表面加工の選び方を解説します。
- 機能性とデザイン性を高める「折り加工」の種類とメリット:用途に合わせた多様な折り方や、情報整理に役立つ折り加工のメリット、そして注意点をお伝えします。
- その他、知っておきたい印刷加工の種類:型抜きや箔押し、ナンバリングなど、オリジナリティや利便性を高める加工についてもご紹介します。
この記事を最後まで読むことで、あなたは印刷物の加工に関する幅広い知識を習得し、目的に合わせて最適な加工を選ぶことができるようになります。読者の心に響く、効果的で魅力的な印刷物を制作するためのヒントが満載です。ぜひ、あなたのビジネスやクリエイティブ活動に役立ててください。
印刷加工の基本を知ろう!加工がもたらす効果とは?
印刷物の加工オプションについて深く掘り下げる前に、まずは「印刷加工」とは一体何なのか、そしてそれが印刷物にどのような効果をもたらすのかを理解しておきましょう。この基礎知識があることで、後の各加工オプションの解説がよりスムーズに頭に入ってくるはずです。
なぜ印刷物に加工を施すのか?加工の役割と重要性
「印刷物に加工を施す」と聞くと、単に見た目を良くするためだけだと考える方もいるかもしれません。しかし、印刷加工は単なる装飾以上の、重要な役割を担っています。その主な理由は、印刷物を「より効果的」にするためです。
理由: 印刷物は、手に取られる瞬間から、読まれて、保管されるまでの間に様々な物理的・視覚的な影響を受けます。加工を施すことで、これらの影響から印刷物を保護し、また、受け取った人に強い印象を与えることができるのです。
具体例: 例えば、頻繁に手に取られるメニュー表や、長期間使用されるカタログなどは、加工なしではすぐに傷んだり汚れたりしてしまいます。また、高級感を演出したい名刺や招待状は、特別な加工が施されていないと、その意図が伝わりにくくなってしまいます。
結論: 印刷加工は、印刷物の寿命を延ばし、メッセージを効果的に伝え、そしてブランドイメージを高めるために不可欠な工程なのです。
加工の種類と目的:見栄え・耐久性・機能性
印刷加工は、大きく分けて「見栄え」「耐久性」「機能性」という3つの主要な目的のために施されます。それぞれの目的に応じて、最適な加工方法が選ばれるのです。
見栄えを向上させる加工
印刷物の第一印象を左右するのが「見栄え」です。色鮮やかさや光沢、マットな質感、手触りなど、視覚や触覚に訴えかけることで、受け取った人に強いインパクトを与えます。
- PP加工(プレスコート加工): 表面に透明なフィルムを貼り付ける加工で、光沢(グロスPP)とつや消し(マットPP)があります。色に深みを与え、高級感を演出します。
- ニス加工: 表面に透明なインクを塗布する加工。全面に塗る「全体ニス」や、特定の部分にのみ塗る「スポットニス」があります。光沢を与えたり、マットな質感にしたりできます。
- 箔押し加工: 熱と圧力で金や銀などの箔を転写する加工。高級感や特別感を演出したい場合に最適です。
- エンボス加工/デボス加工: 印刷物の表面を盛り上げたり(エンボス)、へこませたり(デボス)して立体感を出す加工。手触りによるアクセントや視覚的な魅力を加えます。
具体例: 高級レストランのメニュー表にマットPP加工を施すことで、落ち着いた高級感を演出できます。また、会社のロゴを箔押しすることで、名刺に上質な印象を与えることができます。
耐久性を高める加工
印刷物を長持ちさせ、外部からのダメージから保護するのが「耐久性」を高める加工です。特に、屋外で使用するものや、頻繁に手に触れるものに重要です。
- PP加工: 表面にフィルムを貼ることで、傷、汚れ、水濡れから印刷物を保護します。破れにくくする効果もあります。
- UVニス加工: 紫外線を当てて硬化させるニスを使用する加工。耐摩擦性や耐水性を高めます。
- ラミネート加工: 比較的厚手のフィルムで印刷物を完全に覆う加工。防水性や耐久性を飛躍的に向上させます。
具体例: 屋外で使用するポスターにはUVニス加工やラミネート加工を施すことで、雨風や紫外線による劣化を防ぎ、長期間きれいな状態を保てます。頻繁にめくられる絵本やカレンダーにはPP加工が適しています。
機能性を付与する加工
印刷物に特定の機能を持たせることで、利用者の利便性を向上させたり、特殊な用途に対応させたりします。
- 折り加工: 印刷物を特定の形に折りたたむ加工。コンパクトに収納したり、情報を段階的に見せたりするのに役立ちます。
- 型抜き(ダイカット)加工: 印刷物を自由な形にカットする加工。メッセージカードやタグなど、オリジナリティあふれる形状の印刷物を作成できます。
- ミシン目加工: 切り取り線を入れる加工。クーポン券や応募はがき、チケットなど、一部を切り離して使用する印刷物に用いられます。
- ナンバリング加工: 印刷物に通し番号を印字する加工。チケットや整理券、保証書など、個体を識別する必要があるものに利用されます。
具体例: イベントのパンフレットを三つ折りにすることで、コンパクトに持ち運びやすく、情報も整理されて見やすくなります。展示会の入場パスにミシン目加工を施し、半券を切り取れるようにすることで、スムーズな入場管理が可能になります。
これらの加工を適切に組み合わせることで、単なる紙媒体では終わらない、付加価値の高い印刷物を作り出すことができます。次のセクションでは、特に選択肢の多い「表面加工」について、具体的な種類とその特徴をさらに詳しく見ていきましょう。
印刷物の印象を大きく変える「表面加工」の種類と特徴
印刷物の「顔」とも言えるのが、表面加工です。表面加工は、印刷物の印象を大きく左右するだけでなく、耐久性や手触りといった機能性も高める重要な役割を担っています。ここでは、代表的な表面加工の種類とその特徴、そして選び方のポイントを詳しく解説します。
ツルツル?マット?定番の表面加工(PP加工、UVニス加工など)
最も一般的で、多くの印刷物に使われているのが、見た目や手触りを変える定番の表面加工です。これらは、印刷物の保護にも優れています。
- PP加工(ポリプロピレン加工)
印刷物の表面に薄いポリプロピレンフィルムを熱圧着する加工です。光沢のある「グロスPP」と、光沢を抑えた「マットPP」の2種類があります。- グロスPP: 鏡面のようなツヤを出し、色を鮮やかに見せる効果があります。写真やイラストがメインの印刷物や、明るく華やかな印象を与えたい場合に適しています。また、耐久性が非常に高く、傷や汚れに強いのが特徴です。
- マットPP: 光沢を抑えた落ち着いた質感で、指紋がつきにくいのが特徴です。上品で高級感のある印象を与えたい名刺や会社案内、パンフレットなどに広く使われます。
- ニス加工
透明なニスを印刷物の表面に塗布し、乾燥させる加工です。印刷機のインクと同じように塗布できるため、PP加工に比べて安価に加工できるのがメリットです。- 全体ニス: 印刷物全体にニスを塗布します。光沢のあるグロスニスと、つや消しのマットニスがあり、PP加工と同様の効果を得られますが、PP加工ほどの保護力はありません。
- UVニス加工: 紫外線を当てて硬化させる特殊なニスを使用します。非常に高い光沢感と耐久性を持つのが特徴です。また、特定のデザイン部分にのみニスを塗布する「スポットUV」という方法もあり、デザインの特定部分だけを光らせることで、視覚的なアクセントをつけられます。
具体例: 化粧品のパッケージや高級カタログには、マットPP加工とスポットUVを組み合わせることで、商品の写真部分だけをツヤツヤに際立たせ、高級感を演出することができます。一方、手軽に高級感を出したい会社のパンフレットには、マットPP加工だけでも十分な効果が期待できます。
手触りで魅せる特殊な表面加工(エンボス、デボス、ベルベットPPなど)
定番の表面加工に加え、より強いインパクトやオリジナリティを出したい場合に用いられるのが、特殊な表面加工です。これらは、視覚だけでなく、触覚にも訴えかけることで、印刷物に特別な価値を与えます。
- エンボス加工
印刷物の裏側から圧力をかけ、特定のデザイン部分を立体的に浮き上がらせる加工です。凸版と凹版を合わせて紙を挟み込み、熱と圧力をかけることで、ロゴや文字を盛り上げることができます。印刷とは異なり、紙そのものの凹凸でデザインを表現するため、インクを使わなくても独特の高級感を演出できます。 - デボス加工
エンボス加工とは逆に、表面から圧力をかけ、特定のデザイン部分をへこませる加工です。こちらもインクを使わずに、紙の質感だけでデザインを表現します。落ち着いたシックな印象や、シンプルながらも洗練されたデザインにしたい場合に適しています。 - 箔押し加工
熱した金型で金箔や銀箔、色箔などを紙に圧着転写する加工です。光を反射してキラキラと輝くため、非常に高級感や特別感を演出できます。結婚式の招待状やブランドの名刺、商品のパッケージなどに頻繁に用いられます。 - ベルベットPP加工(ビロード加工)
マットPP加工の一種ですが、よりつや消しの度合いが高く、ベルベットのようなしっとりとした手触りが特徴です。指紋がつきにくく、上品で柔らかな印象を与えます。手に取った瞬間にその質感の良さが伝わるため、付加価値を高めたい印刷物におすすめです。
具体例: イベントの招待状にエンボス加工でロゴを盛り上げ、さらに箔押しを施すことで、受け取った瞬間に「特別なイベントだ」という期待感を高めることができます。企業のパンフレットの表紙にベルベットPP加工を施すことで、触り心地の良さから「この会社は品質にこだわっている」という印象を与えることができるでしょう。
表面加工の選び方とポイント
これだけ多くの種類があると、どれを選べばいいか迷ってしまいますよね。最適な表面加工を選ぶためのポイントは以下の通りです。
- 印刷物の用途と目的を明確にする:
「何を伝えたいのか?」「誰に渡すのか?」「どこで使うのか?」を考えましょう。例えば、見栄え重視ならグロスPPや箔押し、耐久性重視ならPP加工、上品さ重視ならマットPPやデボス加工が適しています。
- 予算を考慮する:
PP加工やニス加工は比較的安価ですが、箔押しやエンボス加工などの特殊加工はコストが高くなります。予算内で最大の効果を得られる組み合わせを検討しましょう。
- デザインとの相性を考える:
加工はデザインの一部です。写真やイラストが多いデザインにはグロスPPが映えますし、文字やシンプルなロゴにはデボス加工や箔押しが効果的です。デザイナーと相談しながら決めるのが良いでしょう。
- 実際のサンプルを確認する:
ウェブサイトの画像だけでは、手触りや光沢感を完全に把握することはできません。多くのネット印刷会社が加工サンプルの請求サービスを提供していますので、実際に手に取って比較検討することをおすすめします。
これらのポイントを参考に、あなたの印刷物にとって最適な表面加工を見つけてください。次は、もう一つの重要な加工である「折り加工」について詳しく見ていきましょう。
機能性とデザイン性を高める「折り加工」の種類とメリット
印刷物の印象を変える表面加工に続き、ここでは「折り加工」について詳しく見ていきましょう。折り加工は、印刷物の形を変え、機能性を高めることで、情報の伝え方や使い勝手を飛躍的に向上させる重要な加工です。パンフレットやDM(ダイレクトメール)、チラシなど、私たちの身近な印刷物に広く使われています。
用途で選ぶ!主な折り加工の種類(二つ折り、巻き三つ折り、DM折りなど)
折り加工には様々な種類があり、それぞれ異なる用途と効果を持っています。目的に合わせて最適な折り方を選ぶことが、効果的な印刷物制作の鍵となります。
以下に代表的な折り加工の種類とその特徴をまとめました。
折り加工の種類 | 特徴と用途 | 適した印刷物 |
---|---|---|
二つ折り | 紙を中央で半分に折る最もシンプルな折り方。内側に情報を隠せるため、A4サイズの紙を半分に折ってパンフレットにするなど、情報の整理に便利。 | パンフレット、メニュー、招待状、挨拶状 |
巻き三つ折り | 紙を3等分し、両端の2つの面を内側に折り込む方法。外側から内側へ順番に情報を展開させることができる。 | 会社案内、パンフレット、DM、観光ガイド |
Z折り(外三つ折り) | 紙を3等分し、交互に山折り・谷折りを繰り返してアルファベットの「Z」のような形に折りたたむ方法。開くと一枚の紙になり、見開きで全体を見せたい場合に適している。 | DM、地図、簡単な会社案内 |
観音折り | 左右両端を内側に折り込み、中央で合わせる方法。扉を開くようなユニークな見た目になり、高級感や特別感を演出できる。中央に重要な情報を配置すると効果的。 | 会社案内、高級パンフレット、美術展の案内 |
DM折り(二つ折り+巻き三つ折り) | 二つ折りしたものをさらに三つ折りにする複雑な折り方。多くの情報をコンパクトにまとめたいDMなどに使われることが多い。 | ダイレクトメール、料金表、多言語対応のパンフレット |
理由: これらの折り加工は、単に紙を小さくするだけでなく、情報の「流れ」を作り出す役割も果たします。例えば、巻き三つ折りでは、開くたびに新しい情報が現れるため、ストーリー性のある構成にすることができます。Z折りは、開いた時に全体が一望できるため、地図や全体像を伝えたい場合に適しています。
折り加工のメリット:情報の整理と使いやすさ
折り加工を施すことには、以下のような具体的なメリットがあります。
- 情報の整理: 多くの情報を限られたスペースに分かりやすく配置できます。ページごとに情報を区切ることで、読者が混乱することなく、伝えたいメッセージをスムーズに理解できます。
- 携帯性の向上: A4サイズのチラシも、折り加工を施すことで、カバンやポケットに入れやすいサイズになります。これにより、受け取った人が持ち帰りやすくなり、情報を見てもらえる機会が増えます。
- 訴求力の向上: ユニークな折り方(例:観音折り)は、受け取った人に「この印刷物は何か違うぞ」という興味を抱かせ、開封率や読了率を高める効果が期待できます。
- 紙の耐久性向上: 折り目がつくことで、紙が持つ剛性が増し、破れにくくなります。また、折りたたむことで印刷面が保護され、傷や汚れから守られます。
具体例: イベントのタイムテーブルを掲載したチラシをZ折りにすることで、来場者は一目で全体の流れを把握できます。また、イベント会場で配布するパンフレットをコンパクトな巻き三つ折りにすることで、来場者が持ち帰りやすくなり、イベント終了後も情報が手元に残る可能性が高まります。
折り加工を施す際の注意点
折り加工は非常に便利ですが、デザインやデータ作成においていくつか注意すべき点があります。
- 内側に折り込む面のサイズ: 巻き三つ折りや観音折りの場合、内側に折り込む面は、外側の面よりも数ミリ短くする必要があります。これは、折りたたんだ際に紙の厚みで内側の面がはみ出してしまうのを防ぐためです。この調整を怠ると、仕上がりが不格好になったり、折り目がきれいに揃わなかったりする原因となります。
- 折り位置の正確な指定: デザインデータを作成する際は、折り位置を正確なトンボ(折り線)で指定する必要があります。この指定が曖昧だと、意図した場所で折れず、デザインがずれてしまう可能性があります。
- 紙の厚さ: 厚い紙に折り加工を施すと、折り目に亀裂が入ったり、紙が割れたりする「背割れ」という現象が起こることがあります。これを防ぐためには、事前にスジ入れ(罫線)加工を施す必要があります。多くのネット印刷会社は、厚い紙への折り加工の際にこのスジ入れを推奨しています。
結論: 折り加工は、印刷物に機能性とデザイン性を両立させるための強力なツールです。しかし、上記の注意点を踏まえ、データ作成時には特に慎重な対応が求められます。不明な点があれば、必ず印刷会社に確認するようにしましょう。
その他、知っておきたい印刷加工の種類
表面加工や折り加工は印刷物の印象や機能性を大きく左右しますが、他にも印刷物の魅力をさらに引き出し、特定の用途に特化した様々な加工オプションが存在します。ここでは、一歩進んだ印刷物制作のために知っておきたい、その他の主要な印刷加工についてご紹介します。
型抜き(ダイカット)加工でオリジナリティを出す
型抜き加工、別名ダイカット加工とは、印刷物を自由な形状にカットする加工のことです。通常、印刷物は四角形に断裁されますが、型抜き加工を用いることで、円形、星形、動物の形、または複雑なロゴの形など、一般的な形状では表現できないデザインを実現できます。
理由: 型抜き加工は、印刷物のオリジナリティと視覚的なインパクトを格段に高めます。通常の四角い印刷物の中に埋もれがちなDMやパンフレットも、型抜きを施すことで受け取った人の目を引き、記憶に残りやすくなります。また、特定の形にすることで、メッセージやブランドイメージをより強く印象づける効果も期待できます。
具体例:
- イベントの招待状: イベントのテーマに合わせた形(例:クリスマスイベントならツリー型、音楽イベントなら音符型)に型抜きすることで、特別感を演出できます。
- 商品タグ: アパレル製品のタグをブランドロゴの形に型抜きすることで、商品の付加価値を高め、ブランド認知度向上にも繋がります。
- DMやチラシ: 読者の目を引くユニークな形状にすることで、開封率や読了率を高める効果が期待できます。例えば、商品パッケージの形に型抜きしたDMは、受け取った人の興味を強く引きつけます。
注意点: 型抜き加工は、専用の金型を作成する必要があるため、初期費用が発生します。また、複雑な形状になればなるほどコストは高くなる傾向があります。小ロットでの制作には不向きな場合もありますので、事前に印刷会社に相談し、費用対効果を検討することが重要です。
箔押し加工で高級感を演出
先ほど表面加工でも触れましたが、箔押し加工は、金属製の版を熱して金や銀、または様々な色の箔を紙に転写する加工です。キラキラと輝くメタリックな質感は、印刷物全体に圧倒的な高級感と特別感を与えます。
理由: 箔押しは、通常のインクでは表現できない光沢や質感を持つため、非常に目立ち、受け取った人に強い印象を与えます。特に、ブランドのロゴや重要な文字、イラストなどに使用することで、その部分を際立たせ、印刷物の価値を高めます。
具体例:
- 名刺やショップカード: 会社名やロゴを金や銀の箔押しにすることで、洗練された高級感を演出し、ビジネスシーンでの信頼性を高めます。
- 招待状やグリーティングカード: 結婚式の招待状や特別なイベントの案内状に箔押しを施すことで、受け取った人に「これは大切なものだ」という印象を与え、期待感を高めます。
- 商品のパッケージやラベル: ブランドロゴや商品名を箔押しにすることで、陳列棚での存在感を際立たせ、消費者の購買意欲を刺激します。
- 書籍の表紙: タイトルや著者名を箔押しにすることで、豪華な印象を与え、内容の質感を高めます。
注意点: 箔押しも型抜きと同様に、専用の版を作成する必要があるため、コストが高めになります。また、細かすぎる文字やデザインは、箔がうまく転写されない可能性があるため、デザイン時には注意が必要です。印刷会社と密に連携し、最適なデザインを検討しましょう。
ナンバリング・ミシン目加工で利便性を向上
ナンバリング加工とミシン目加工は、印刷物に実用的な機能を付与し、その利便性を大きく向上させる加工です。
- ナンバリング加工:
印刷物一つひとつに異なる通し番号を印字する加工です。主にチケット、整理券、クーポン券、保証書、会員証、アンケート用紙などに使用されます。
理由: 個々の印刷物を識別可能にすることで、管理の効率化、セキュリティの向上、データの追跡といったメリットが生まれます。例えば、イベントの入場管理では重複入場を防ぎ、アンケートでは回答者を特定せずにデータを集計できます。
具体例:
- コンサートチケット: 整理番号を振ることで、スムーズな入場と来場者数の把握が可能になります。
- クーポン券: シリアル番号を付与することで、不正利用を防ぎ、利用状況を追跡できます。
- 懸賞はがき: ナンバーによって当選者を管理し、公平な抽選が行えます。
- ミシン目加工:
印刷物に切り取りやすい点線(ミシン目)を入れる加工です。クーポン券、応募はがき、チケットの半券、アンケートの切り取り部分などに利用されます。
理由: 印刷物の一部をきれいに、かつ手軽に切り取れるようにすることで、利用者の利便性を高めます。これにより、クーポン利用や応募など、特定の行動を促しやすくなります。
具体例:
- 飲食店の割引クーポン: チラシの一部をミシン目で切り取れるようにすることで、来店時に持参しやすくなります。
- イベントの入場券: 半券部分にミシン目を入れ、入場時に切り取って回収することで、入場管理と記念品としての役割を両立できます。
- 返信はがき付きのDM: 返信用はがき部分にミシン目を入れることで、受取人が手軽に返信できるようになります。
結論: ナンバリングやミシン目加工は、印刷物の実用性を高め、管理や運用をスムーズにするために非常に有効です。特に、データ管理や利用状況の追跡が必要な場合は、これらの加工の導入を検討すると良いでしょう。
これらの多様な加工オプションを理解し、目的に合わせて適切に選択することで、あなたの印刷物は単なる情報伝達のツールを超え、より強力なコミュニケーションツールへと進化します。次は、加工に関するよくある質問にお答えしていきます。
印刷加工に関するよくある質問(FAQ)
ここまで、印刷物の表面加工、折り加工、そしてその他の特殊加工について詳しく解説してきました。多様な加工オプションがあるからこそ、「結局どれを選べばいいの?」「費用はどのくらい?」といった具体的な疑問が生まれることでしょう。ここでは、印刷加工に関してよくある質問にQ&A形式でお答えします。
印刷物の表面加工にはどんな種類がありますか?
印刷物の表面加工には、主に光沢やマットな質感を与える加工と、手触りや立体感を出す特殊な加工があります。
理由: 印刷物の表面を加工することで、見た目の美しさを高めるだけでなく、耐久性を向上させ、汚れや傷から保護する役割も果たします。また、受け取る人に与える印象を大きく変えることができます。
具体例:
- PP加工(グロスPP、マットPP): 最もポピュラーな加工で、透明なフィルムを熱圧着します。グロスはツヤがあり、色を鮮やかに見せ、マットは光沢を抑え、指紋がつきにくい特徴があります。耐久性も高いです。
- ニス加工(全体ニス、UVニス、スポットUV): 透明なインクを塗布する加工です。UVニスは紫外線で硬化させ、高い光沢と耐久性を持ちます。スポットUVはデザインの一部にだけ光沢を与え、アクセントになります。
- エンボス加工/デボス加工: 紙を盛り上げたり(エンボス)、へこませたり(デボス)して、紙そのものの凹凸でデザインを表現します。手触りや立体感で高級感を演出します。
- 箔押し加工: 金や銀などの金属箔を熱と圧力で転写する加工です。キラキラと輝き、非常に高い高級感と特別感を演出できます。
- ベルベットPP加工: マットPP加工の一種で、ベルベットのようなしっとりとした柔らかな手触りが特徴です。
結論: 目的や予算に応じて、これらの多様な表面加工から最適なものを選ぶことができます。迷った場合は、実際に加工サンプルを手に取って比較検討することをおすすめします。
印刷物の加工にはどんな意味がありますか?
印刷物の加工には、大きく分けて「見栄えの向上」「耐久性の強化」「機能性の付与」という3つの重要な意味があります。
理由: 印刷物は、単に情報を伝えるだけでなく、ブランドイメージを構築したり、特定の行動を促したりする役割も担っています。加工を施すことで、これらの役割をより効果的に果たせるようになります。
具体例:
- 見栄えの向上:
- 高級感を演出する(例: 名刺の箔押し、会社案内のマットPP加工)。
- デザインの魅力を際立たせる(例: ポスターのUVニス加工、型抜きチラシ)。
- 受け取った人に良い第一印象を与える(例: 手触りの良いベルベットPP加工)。
- 耐久性の強化:
- 傷や汚れから印刷物を保護する(例: メニュー表やパンフレットのPP加工)。
- 水濡れや紫外線による劣化を防ぐ(例: 屋外ポスターのUVニス加工、ラミネート加工)。
- 長期的な使用に耐えうる強度を持たせる(例: 厚手の表紙へのPP加工)。
- 機能性の付与:
- 情報を整理し、見やすくする(例: パンフレットの折り加工)。
- 持ち運びやすくする(例: チラシの折り加工)。
- 管理を効率化する(例: チケットやクーポン券のナンバリング、ミシン目加工)。
結論: 印刷物の加工は、単なる装飾ではなく、その目的を達成するための戦略的なツールとして非常に重要な意味を持っています。目的に合わせて最適な加工を選ぶことが、印刷物の価値を最大化する鍵となります。
印刷の折り加工にはどんな種類がありますか?
印刷の折り加工には、様々なバリエーションがあり、それぞれ情報の見せ方や携帯性に影響を与えます。主な種類としては、二つ折り、三つ折り(巻き三つ折り、Z折り)、観音折り、DM折りなどがあります。
理由: 折り加工は、一枚の大きな紙に印刷された情報を、コンパクトにまとめたり、特定の順序で開示したりするために用いられます。これにより、情報の視認性や利用者の使いやすさが向上します。
具体例:
- 二つ折り: 最もシンプルで、情報量を少なく見せつつ、開くとしっかりした紙面になるため、メニューや挨拶状に最適です。
- 巻き三つ折り: 3つの面を内側に巻き込むように折るため、コンパクトにまとまり、情報が段階的に展開されるので、会社案内やパンフレットによく使われます。
- Z折り(外三つ折り): Zの形に交互に折るため、開くと一枚の紙になり、全体像を一度に見せたい地図や簡単なリーフレットに適しています。
- 観音折り: 両端を中央に向かって折り、さらに二つ折りにする複雑な折り方で、開く動作に特別感があり、高級なパンフレットや招待状に用いられます。
- DM折り: 二つ折りと三つ折りを組み合わせることで、多くの情報をコンパクトにまとめることができ、ダイレクトメール(DM)によく利用されます。
結論: 印刷物の用途や伝えたい情報の量、見せ方によって最適な折り加工は異なります。どのような情報を、どのように読者に届けたいかを明確にして選ぶことが大切です。
折り加工をするとどんなメリットがありますか?
折り加工を施すことで、印刷物には主に情報の整理、携帯性の向上、そしてデザイン性・訴求力の向上というメリットが生まれます。
理由: 折り加工は、単に紙を小さくするだけでなく、限られたスペースに多くの情報を効率的に配置したり、読者が情報を得る体験を豊かにしたりする効果があるためです。
具体例:
- 情報の整理と階層化: 大量の情報も、ページごとに区切って折りたたむことで、読者が混乱せずに順序立てて情報を読み進められます。例えば、企業の事業内容を段階的に紹介するパンフレットなど。
- 携帯性の向上: A4サイズのチラシも、コンパクトに折りたたむことで、ポケットやカバンに収納しやすくなります。イベント会場での配布物や、持ち帰り資料として非常に便利です。
- デザイン性と訴求力の向上: ユニークな折り方は、受け取った人の興味を引き、開いてみたくなる心理を刺激します。例えば、開くたびに絵柄が変わるDMや、サプライズ感のある招待状など、記憶に残る印刷物になります。
- 紙の耐久性向上: 折り目がつくことで紙に厚みと強度が増し、印刷物が折れ曲がったり、破れたりしにくくなります。
結論: 折り加工は、印刷物をより使いやすく、効果的に、そして魅力的にするための重要な加工技術です。配布方法や読者の行動を想像しながら、最適な折り加工を選択しましょう。
まとめ:目的に合った印刷加工で、より魅力的な印刷物を
本記事では、「印刷物の加工オプションには何がある?表面加工から折り加工まで全種類を紹介」と題し、印刷物の加工がもたらす多様な効果について詳しく解説しました。単なる「印刷」に終わらず、加工を施すことで、印刷物は格段にその価値を高められることをご理解いただけたかと思います。
印刷加工の主なポイントを振り返りましょう。
- 印刷加工は、見た目の美しさ、耐久性、機能性を高めるために不可欠です。
- 表面加工には、光沢やマットな質感を出すPP加工やニス加工、手触りや立体感を出すエンボス・デボス加工、高級感を演出する箔押し加工など多種多様な選択肢があります。
- 折り加工は、情報の整理や携帯性の向上に役立ち、二つ折り、巻き三つ折り、Z折りなど、用途に応じた様々な種類があります。
- 型抜き、ナンバリング、ミシン目加工といった特殊加工は、印刷物にオリジナリティや実用的な機能を追加し、より効果的なツールへと進化させます。
- 最適な加工を選ぶには、印刷物の「目的」を明確にし、予算やデザインとの相性を考慮し、可能であれば実物サンプルで確認することが重要です。
印刷加工は、あなたの伝えたいメッセージをより強力に、そして魅力的に届けるための強力な手段です。ターゲットの心に響く印刷物を制作するためには、これらの加工オプションを賢く選択し、活用することが不可欠です。
ぜひ、この記事で得た知識を活かし、あなたの印刷物に最適な加工を見つけてください。各印刷会社のウェブサイトで提供されているサンプルを取り寄せたり、直接相談したりすることで、具体的なイメージを掴み、理想の印刷物制作の一歩を踏み出しましょう。加工の力を最大限に引き出して、あなたのクリエイティブな表現をさらに広げてください。
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