「環境に優しい印刷物を作りたいけれど、どこに頼めばいいのかわからない…」
「FSC認証紙や再生紙ってよく聞くけど、結局何が違うの?コストや品質は大丈夫?」
近年、SDGsへの関心の高まりとともに、企業活動における環境配慮は避けて通れないテーマとなりました。印刷物の制作においても例外ではなく、環境負荷の少ない用紙や印刷方法を選ぶことが、企業イメージの向上やブランディング強化に直結すると注目されています。
しかし、実際に「環境に優しい印刷」を実践しようとすると、どの用紙を選べばいいのか、対応している印刷会社はどこなのか、通常印刷と比べて費用や納期はどうなるのかなど、多くの疑問に直面するのではないでしょうか。
この記事では、そうしたあなたの悩みを解決するため、FSC認証紙や再生紙といったエコ用紙を選べるネット印刷会社を徹底的に解説します。環境配慮型印刷の重要性から、エコ用紙の種類と特徴、さらには環境負荷の少ない印刷方法や表示できるエコマークまで、発注前に知っておきたい情報を網羅しています。
この記事を読めば、あなたの想いを乗せた印刷物を、地球にも人にも優しい形で制作するための最適な道筋が見つかるでしょう。環境に配慮した印刷物を通じて、持続可能な社会への貢献と企業価値の向上を同時に実現しませんか?
なぜ今、環境に配慮した印刷が必要なのか?
現代社会において、企業も個人も「環境への配慮」は避けて通れないテーマとなっています。特にビジネスシーンでは、製品やサービスだけでなく、企業活動全体における環境負荷の低減が求められるようになりました。印刷物も例外ではなく、近年、環境に配慮した印刷(環境配慮型印刷)の重要性が急速に高まっています。
では、なぜ今、これほどまでに環境配慮型印刷が注目され、企業にとって不可欠な要素となっているのでしょうか?その背景には、SDGsの浸透や企業の社会的責任(CSR)への意識の高まり、そして消費者意識の変化があります。
SDGsと企業の環境意識の高まり
2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」は、企業活動のあり方を大きく変えました。SDGsは、貧困の撲滅から気候変動対策まで、17の目標と169のターゲットから構成されており、これらを達成するために、政府、企業、市民社会が一丸となって取り組むことが求められています。
その中でも、印刷業界と特に関連が深いのが、以下の目標です。
- 目標12:つくる責任 つかう責任
持続可能な生産消費形態を確保することを目指します。印刷業界においては、持続可能な方法で管理された森林から得られた紙を使用することや、廃棄物を削減することなどが該当します。 - 目標13:気候変動に具体的な対策を
気候変動とその影響に立ち向かうための緊急対策を取ることを目指します。印刷工程におけるCO2排出量の削減や、再生可能エネルギーの利用などが含まれます。 - 目標15:陸の豊かさも守ろう
陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進を目指します。これは、森林破壊を防ぎ、責任ある森林管理を行うことと直結します。
企業がこれらのSDGs目標達成に貢献する姿勢を示すことは、もはや選択肢ではなく、ビジネスを継続し、成長させる上で不可欠な要素となっています。環境配慮型印刷は、企業がSDGs達成に向けた具体的な行動を示す分かりやすい手段の一つなのです。
環境配慮型印刷がもたらす企業イメージ向上
環境に配慮した印刷物を選択することは、単なるコストや品質の問題を超えた、企業価値を高める重要な戦略となります。
まず、消費者や取引先の「企業イメージ」が向上します。環境問題への意識が高い現代の消費者やビジネスパートナーは、企業のSDGsへの取り組みや環境配慮の姿勢を重視する傾向にあります。環境に優しい印刷物を使用することは、企業が社会や環境に対して責任ある行動を取っていることを明確に示し、信頼性やブランドイメージの向上に直結します。
例えば、FSC認証紙を使用した名刺やパンフレットには、その旨を記載するエコマークを入れることができ、それを見た人に「この企業は環境に配慮している」というメッセージをダイレクトに伝えることができます。これは、単なる広告費以上の効果をもたらすでしょう。
また、環境規制の強化が進む中、法令遵守はもちろんのこと、自主的な環境配慮は企業のリスクマネジメントにも繋がります。将来的な規制強化への対応や、環境問題に起因する風評リスクの低減にも役立つでしょう。
さらに、従業員の「エンゲージメント向上」にも寄与します。環境意識の高い従業員は、自社が社会貢献していることに誇りを感じ、仕事へのモチベーション向上に繋がる可能性があります。結果として、企業の競争力強化にも貢献するのです。
地球に優しい選択が未来を変える
私たちが日々使用する紙は、木材を原料としています。印刷物の制作は、多かれ少なかれ森林資源や水資源、エネルギーを消費し、CO2を排出します。しかし、環境配慮型印刷を選択することで、これらの環境負荷を大幅に軽減することが可能です。
- 森林資源の保全:FSC認証紙のように、適切に管理された森林から生産された木材を使用することで、違法伐採を防ぎ、森林破壊を抑制します。再生紙の利用は、新たな森林伐採の必要性を減らします。
- CO2排出量の削減:省エネルギー型の印刷機の導入や、植物油インキ(VOCフリーインキ)の使用は、製造工程におけるCO2排出量を削減し、地球温暖化対策に貢献します。
- 水質汚染の抑制:水なし印刷などの技術は、有害な廃液の発生を抑え、水質汚染のリスクを低減します。
これらの小さな選択の積み重ねが、地球全体の環境負荷を減らし、未来の世代に豊かな自然を残すことに繋がります。企業や個人が環境配慮型印刷を選ぶことは、単なるコストや品質の問題に留まらず、持続可能な社会の実現に向けた「地球に優しい投資」なのです。
次の章では、実際にどのようなエコ用紙があるのか、FSC認証紙と再生紙を中心に、その種類と特徴、そして選ぶ際のポイントを詳しく解説していきます。
知っておきたいエコ用紙の種類と特徴
前章では、環境に配慮した印刷が現代社会においていかに重要であるかをご理解いただけたかと思います。実際に環境に優しい印刷物を作成する上で、最も身近で重要な選択肢となるのが「用紙」です。一口にエコ用紙と言っても、その種類や特徴は様々であり、それぞれのメリット・デメリットを理解しておくことが、最適な選択をする上で不可欠です。
この章では、環境配慮型用紙の代表格であるFSC認証紙と再生紙を中心に、それぞれの詳細な特徴と、印刷物を制作する上で知っておきたいポイントを解説します。また、これら以外にも注目されているエコ用紙についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
FSC認証紙とは?メリット・デメリット
FSC認証紙とは、FSC(Forest Stewardship Council:森林管理協議会)によって適切に管理された森林から伐採された木材や、FSCの基準を満たすリサイクル材料などから作られた紙のことです。FSCは、世界中の森林を対象に、環境保全の点から見て適切で、社会的な利益に適い、経済的に持続可能な森林管理を推進することを目的とした国際的な非営利団体です。
メリット
- 環境保全への貢献が明確:FSC認証紙を選ぶことは、森林の違法伐採や過剰な伐採を防ぎ、生物多様性の保全、先住民族の権利保護など、環境的・社会的に責任ある森林管理を直接的に支援することになります。
- 高い信頼性と透明性:FSC認証は、森林から最終製品に至るまでの加工・流通過程(CoC認証)が厳しく管理されており、そのトレーサビリティ(追跡可能性)が保証されています。これにより、「この紙は本当に環境に配慮されている」という高い信頼性が得られます。
- 企業イメージ向上に寄与:FSC認証マークを印刷物に表示することで、企業や団体が環境問題に積極的に取り組んでいる姿勢を明確にアピールできます。これは、企業のブランディングやCSR活動において非常に大きなメリットとなります。特に、環境意識の高い消費者や取引先に対して、強いメッセージを発信できます。
- 品質の安定性:FSC認証紙は、バージンパルプを原料としていることが多いため、通常の紙と変わらない品質や印刷適性を持ちます。色合いや手触り、耐久性などにおいて、再生紙のような制約が少ない傾向にあります。
デメリット
- コストが割高になる可能性:通常の用紙に比べて、FSC認証紙はややコストが高くなる傾向があります。これは、厳格な認証プロセスやサプライチェーンの管理にかかる費用が上乗せされるためです。
- 選択肢の限り:全ての紙がFSC認証を受けているわけではないため、選べる紙の種類や厚み、色などに限りがある場合があります。
FSC認証紙は、環境への配慮を明確に示し、高品質な印刷物を求める企業や団体に特におすすめの選択肢と言えるでしょう。
再生紙とは?印刷時の注意点
再生紙とは、一度使用された古紙を回収し、それを原料として再び製造された紙のことです。古紙パルプ配合率が100%のものもあれば、一部を新しいパルプと混合したものもあります。
メリット
- 資源の有効活用と廃棄物削減:古紙を再利用することで、森林資源の消費を抑え、廃棄物の量を減らすことができます。これは、循環型社会の実現に大きく貢献します。
- 製造時の環境負荷低減:バージンパルプから紙を製造するよりも、再生紙を製造する方が、CO2排出量や水の使用量を削減できるとされています。
- コスト面での優位性:一部の種類を除き、一般的な再生紙はFSC認証紙と比較して、比較的安価に入手できる傾向があります。
デメリットと印刷時の注意点
- 品質や色合いのばらつき:古紙の品質や配合率によって、紙の色合い(わずかに灰色がかったり、黄ばんだりすることがある)や表面の平滑性、印刷の再現性に多少のばらつきが生じることがあります。特に、写真やフルカラーの印刷では、発色が若干沈む可能性があります。
- 繊維の短さによる強度低下:古紙は再利用されるたびに繊維が短くなるため、紙の強度がバージンパルプの紙に比べて劣る場合があります。耐久性が求められる用途には注意が必要です。
- 漂白工程の環境負荷:古紙を白い紙に再生する過程で、漂白剤を使用することがあり、その製造工程が環境負荷となる可能性もあります。ただし、近年では環境に配慮した漂白方法が開発・導入されています。
再生紙を選ぶ際は、これらの特性を理解した上で、用途やデザインとの相性を考慮することが重要です。特に、色味の再現性を重視する場合は、事前にテスト印刷やサンプル確認を行うことをおすすめします。最近では技術の進歩により、高品質な再生紙も増えています。
その他、環境に優しい用紙(非木材紙、LIMEXなど)
FSC認証紙や再生紙以外にも、環境に配慮した様々な用紙が存在します。これらは特定の環境課題に対応するために開発されたもので、よりユニークな選択肢を提供します。
非木材紙(バガス紙、竹紙、ケナフ紙など)
非木材紙とは、木材パルプ以外の植物繊維を原料として作られた紙のことです。例えば、サトウキビの搾りかす(バガス)、竹、ケナフなどが利用されます。
- 特徴:木材資源の消費を抑制し、森林保護に貢献します。原料となる植物は成長が早く、持続可能な供給が期待できます。
- 効果:森林保護だけでなく、農業廃棄物の有効活用にもつながります。
- 適した用途:エコロジー感を強くアピールしたい印刷物、サステナビリティに関するレポートやパンフレットなどに適しています。独特の風合いを持つものも多いです。
LIMEX(ライメックス)
LIMEX(ライメックス)は、石灰石を主原料とした新素材で、紙の代替となる「LIMEXシート」や、プラスチックの代替となる「LIMEXペレット」などがあります。製造時に水や木材パルプをほとんど使用しない画期的な素材です。
- 特徴:耐水性に優れ、破れにくい強度を持ちます。水に濡れても文字が滲みにくく、屋外での使用や水回りでの使用にも適しています。
- 効果:水資源や森林資源の保全に大きく貢献します。また、製造時のCO2排出量も抑制されます。
- 適した用途:メニュー、ポスター、名刺、マップ、屋外イベントのパンフレットなど、耐水性や耐久性が求められる印刷物や、企業の先進的な環境への取り組みをアピールしたい場合に最適です。
これらのエコ用紙は、それぞれ異なる特性と環境メリットを持っています。あなたの印刷物の目的や予算、表現したいイメージに合わせて、最適な用紙を選ぶことが、より効果的な環境配慮型印刷物を実現する鍵となります。次章では、これらのエコ用紙に対応した印刷サービスを提供するネット印刷会社をご紹介します。
環境に配慮した印刷方法とエコマーク
前章では、環境に優しい印刷物を作る上で不可欠な「エコ用紙」について、FSC認証紙や再生紙を中心にその特徴やメリット・デメリットを解説しました。しかし、環境配慮型印刷は用紙の選択だけで完結するものではありません。印刷工程そのものにおいても、地球環境への負荷を低減するための様々な技術が進化し、導入されています。
この章では、用紙以外の環境負荷の少ない印刷技術に焦点を当て、具体的にどのような方法があるのかをご紹介します。さらに、環境に配慮した印刷物であることを外部に示す「エコ印刷マーク」についても解説します。これらの知識を持つことで、あなたの印刷物をより包括的に環境に優しいものにし、その取り組みを効果的にアピールできるようになるでしょう。
環境負荷の少ない印刷技術
印刷技術の進化は、環境負荷の低減にも大きく貢献しています。ここでは、代表的な環境配慮型印刷技術をいくつかご紹介します。
ノンVOCインキ(植物油インキ・UVインキ)
従来のオフセット印刷で使われるインキには、乾燥を早めるためにVOC(揮発性有機化合物)と呼ばれる有機溶剤が含まれていました。VOCは、大気中に放出されると光化学スモッグの原因となるなど、環境や人体に悪影響を及ぼす可能性があります。
- 植物油インキ(ノンVOCインキ):大豆油や亜麻仁油などの植物油を主成分としたインキです。VOCの使用量を大幅に削減できるため、大気汚染の抑制に貢献します。環境負荷が低いだけでなく、リサイクル適性が高いというメリットもあります。多くの印刷会社で採用が進んでいます。
- UVインキ:紫外線(UV)を照射することで瞬時に硬化するインキです。乾燥工程で熱を必要とせず、またVOCをほとんど含まないため、省エネルギーかつ環境に優しい印刷が可能です。速乾性のため、短納期化にも寄与します。
これらのインキを選択することで、印刷物の製造過程における環境負荷を軽減できます。特に、企業の環境報告書やCSRレポートなど、企業の環境意識をアピールしたい印刷物にはぜひ検討したい技術です。
水なし印刷(Wetless Printing)
オフセット印刷では通常、インキと水の反発作用を利用して印刷を行います。この際、湿し水と呼ばれる水を使用しますが、この湿し水にはIPA(イソプロピルアルコール)などの有害物質が含まれることがあります。水なし印刷は、この湿し水を一切使用しない印刷方法です。
- 特徴:湿し水を使用しないため、IPAなどの有害物質の排出がなくなります。これにより、水質汚染のリスクを低減し、作業環境の改善にも繋がります。
- 効果:環境負荷の低減に加えて、インキと水のバランス調整が不要になるため、色ムラが少なく、安定した高品質な印刷が可能になります。また、立ち上がりのインキ使用量が減るため、損紙(試し刷りなどで発生する廃棄紙)の削減にも貢献します。
- 適した用途:環境負荷を極力抑えたい印刷物全般に適しています。特に、写真やイラストの色再現性を重視するパンフレットやカタログなどで、高い品質と環境配慮を両立できます。
水なし印刷は、設備投資が必要なため全ての印刷会社が導入しているわけではありませんが、環境意識の高い印刷会社では積極的に採用されています。
CTP(Computer To Plate)
CTPは、コンピューターで作成したデータを直接印刷版に出力する技術です。従来のPS版(刷版)では、製版フィルムや現像液が必要でしたが、CTPではこれらを不要にすることができます。
- 特徴:フィルムや現像液といった化学薬品の使用を削減し、廃棄物の発生を抑制します。
- 効果:環境負荷の低減に加え、工程が簡略化されるため、製版時間の短縮や品質の安定化にも繋がります。
現代の多くの印刷会社で普及している技術ですが、改めてその環境メリットを認識しておくことも重要です。
印刷物でアピール!エコ印刷マークの種類
環境に配慮した用紙や印刷技術を使用しても、それが外部に伝わらなければ意味がありません。そこで重要になるのが、印刷物に表示できる「エコ印刷マーク」です。これらのマークは、製品が特定の環境基準を満たしていることを客観的に証明するものであり、企業の環境への取り組みを効果的にアピールする強力なツールとなります。
FSC®︎認証マーク
前章でも触れたFSC®︎認証マークは、FSC認証を受けた森林の木材や、適切に管理されたリサイクル資源から作られた紙を使用していることを示すマークです。印刷物に使用することで、その製品が「責任ある森林管理」を支持していることを明確に伝えられます。
- 特徴:世界中で認知されており、信頼性が非常に高い国際的なマークです。
- 効果:企業の環境意識の高さをグローバルにアピールでき、サプライチェーン全体の透明性を示すことができます。
- 表示条件:FSCのCoC認証(加工・流通過程の管理認証)を取得した印刷会社で印刷する必要があります。
グリーンプリンティング(GP)マーク
グリーンプリンティング(GP)マークは、日本独自の環境印刷認証制度である「グリーンプリンティング認定制度」に基づき、環境に配慮した印刷工場で生産された印刷物に表示できるマークです。
- 特徴:印刷工程全体において、環境負荷低減の基準をクリアした工場で生産されたことを示します。具体的には、資材の環境配慮(エコ用紙、ノンVOCインキなど)、廃棄物削減、省エネルギー、有害化学物質の管理などが評価されます。
- 効果:印刷物の環境性能を総合的にアピールでき、特に国内での環境意識の高い取引先や消費者に対して有効です。
- 表示条件:グリーンプリンティング認定を取得した印刷会社で印刷する必要があります。
エコマーク
エコマークは、公益財団法人日本環境協会が認定する、環境保全に役立つ商品につけられるマークです。印刷物においては、古紙パルプ配合率が一定以上の再生紙を使用している場合などに表示が可能です。
- 特徴:日本で最も広く認知されている環境ラベルの一つです。
- 効果:一般消費者にも環境に優しい製品であることが分かりやすく伝わります。
- 表示条件:エコマーク認定基準を満たす必要があります。
これらのエコマークを印刷物に表示することで、企業が環境への責任を果たしていることを視覚的にアピールし、ブランド価値を高めることができます。
環境配慮型印刷の費用と納期
環境配慮型印刷を検討する上で、気になるのが費用と納期でしょう。結論から言えば、一般的な印刷と比較して、やや割高になったり、納期が長くなったりする可能性があります。しかし、その差は年々縮まっており、メリットを考慮すれば十分選択肢となり得ます。
費用について
- 用紙の種類:FSC認証紙やLIMEXなどの特殊なエコ用紙は、通常の用紙よりもコストが高くなる傾向があります。再生紙は種類によっては比較的安価なものもありますが、高品質な再生紙は通常紙と同等かそれ以上の価格になることもあります。
- 印刷技術:水なし印刷やノンVOCインキの使用は、初期投資や特別な設備が必要となるため、その分の費用が印刷費に上乗せされる場合があります。
- ロット数:小ロットの場合は単価が割高になる傾向がありますが、まとまった部数を印刷することでコスト効率が向上することがほとんどです。
ただし、環境配慮型印刷にかかる費用は、単なるコストではなく、企業のブランド価値向上やSDGsへの貢献といった投資と捉えることができます。長期的な視点で見れば、むしろ費用対効果の高い選択となる可能性も十分にあります。
納期について
- 特殊な用紙の取り寄せ:FSC認証紙や特定の特殊紙は、通常の用紙よりも取り寄せに時間がかかる場合があります。
- 特殊な印刷技術:水なし印刷など、特別な設備や工程が必要な場合は、通常の印刷よりも納期が長めに設定されることがあります。
- 認証マークの確認:エコマークなどを表示する場合、その基準を満たしているかの確認作業が発生するため、通常より時間がかかることがあります。
環境配慮型印刷を依頼する際は、これらの費用と納期を考慮し、早めに印刷会社に相談し、詳細な見積もりとスケジュールを確認することが重要です。多くのネット印刷会社では、環境配慮型印刷のプランを提供しており、費用や納期に関する情報もウェブサイトで公開していますので、まずは調べてみることをお勧めします。
次の章では、実際にFSC認証紙や再生紙などのエコ用紙を取り扱っており、環境配慮型印刷に対応しているおすすめのネット印刷会社をご紹介します。
FSC認証紙・再生紙を選べるおすすめネット印刷会社
これまでの章で、環境配慮型印刷の重要性や、FSC認証紙・再生紙といったエコ用紙の種類、そして環境負荷の少ない印刷技術について理解を深めていただけたかと思います。いざ「環境に優しい印刷物を作ろう!」と思っても、数あるネット印刷会社の中からどこを選べば良いのか迷ってしまうかもしれません。
この章では、FSC認証紙や再生紙の取り扱いがあり、環境配慮型印刷に力を入れているおすすめのネット印刷会社をいくつかご紹介します。各社の特徴や対応用紙の種類、価格帯、サービスの利便性などを比較しながら、あなたのニーズに最適な会社を見つけるための情報を提供します。
グラフィック
グラフィックは、幅広い印刷ニーズに対応する大手ネット印刷会社の一つです。環境配慮への取り組みも積極的で、FSC認証紙の取り扱いが豊富です。
- 特徴とおすすめポイント:
- FSC森林認証印刷に対応:チラシ、名刺、冊子など、多種多様な商品でFSC認証紙を選択できます。FSCのCoC認証(加工・流通過程の管理認証)を取得しているため、お客様自身が認証機関へ申請する手間なく、FSCロゴマーク入りの印刷物を制作できます。
- 対応用紙の種類:マットコート紙や上質紙など、FSC認証に対応した様々な用紙が用意されています。詳細な用紙ラインナップは公式サイトで確認できます。
- 品質と実績:長年の実績と高い印刷品質には定評があり、安心して依頼できます。
- 利便性:オンラインでの見積もりから注文までがスムーズで、初心者でも利用しやすいインターフェースです。
- こんな方におすすめ:
- FSC認証紙を使った高品質な印刷物を手軽に作りたい企業や個人。
- チラシ、名刺、冊子など、幅広いアイテムで環境配慮をしたい方。
- 信頼と実績のある大手ネット印刷会社を選びたい方。
公式サイトでFSC認証対応の商品と用紙を確認し、無料サンプル請求で紙質を確かめることをおすすめします。
キンコーズ・ジャパン
キンコーズ・ジャパンは、店舗とオンラインの両方でサービスを展開している印刷会社です。特に少量多品種のオンデマンド印刷に強く、FSC認証紙や独自の再生紙「PELP! PAPER」など、エコ用紙の選択肢も充実しています。
- 特徴とおすすめポイント:
- FSC認証紙の取り扱い:名刺、封筒、パンフレット、ポスターなど、多くの商品でFSC認証紙を選択できます。FSCラベル付き印刷物も制作可能です。
- 100%再生紙「PELP! PAPER」:オフィスで排出される不用なコピー用紙を回収・再生した「PELP! PAPER」を使用した名刺や封筒印刷に対応しています。「捨てず、燃やさず、めぐる紙」というコンセプトで、資源循環に貢献できます。
- 短納期対応:商品によっては最短3時間仕上げなど、急ぎの印刷にも対応できるのが強みです。
- 多様なサービス:印刷だけでなく、デザイン作成や製本、加工など、幅広いニーズに対応しています。
- こんな方におすすめ:
- 少量からでもFSC認証紙や再生紙を使った印刷物をすぐに欲しい方。
- 独自の取り組みである「PELP! PAPER」に興味がある方。
- 印刷だけでなく、デザインや加工などもまとめて依頼したい方。
キンコーズの店頭では用紙サンプルを直接確認できる場合もあるので、足を運んでみるのも良いでしょう。
WAVE
WAVEは、環境に配慮した「Ecoプリント」に力を入れているネット印刷会社です。資材から製造工程、リサイクルまで、総合的な環境負荷低減に取り組んでいます。
- 特徴とおすすめポイント:
- 「Ecoプリント」の推進:植物油インキの使用、CO2排出量削減、有害物質不使用など、多角的に環境配慮型印刷を推進しています。環境保護印刷の最高ステータス認証も取得しています。
- 環境対応用紙のラインナップ:FSC認証紙はもちろん、非木材パルプ(竹パルプ)を使用した「竹はだGA」や、環境配慮型用紙「マシュマロCoC」など、ユニークなエコ用紙の選択肢も提供しています。
- 品質へのこだわり:環境配慮と同時に、高品質な印刷物を提供することにも注力しています。
- 環境配慮型商品の提案:紙製のペーパーリングを使用した卓上カレンダーなど、環境に配慮したオリジナル商品も開発・提供しています。
- こんな方におすすめ:
- 用紙だけでなく、印刷工程全体で環境に配慮したいと考えている方。
- 植物油インキなどの環境負荷の少ない印刷技術にこだわりたい方。
- 一般的なエコ用紙以外の、ユニークな環境対応用紙も検討したい方。
WAVEのウェブサイトでは、詳細な環境配慮への取り組みが紹介されているため、企業のサステナビリティ担当者にも参考になる情報が多いでしょう。
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これらのネット印刷会社以外にも、環境配慮型印刷に対応している企業は増えています。各社のウェブサイトで最新の情報を確認し、あなたの印刷物の種類、部数、納期、予算、そして環境へのこだわり度合いに合わせて、最適なパートナーを選んでください。
次の章では、実際に環境に優しい印刷物を発注する際の具体的な注意点と、より効果的に活用するためのヒントをお伝えします。
環境に優しい印刷物を発注する際の注意点
ここまで、環境配慮型印刷の重要性やエコ用紙の種類、そしておすすめのネット印刷会社について見てきました。いよいよ実際に環境に優しい印刷物を発注する段階になったら、どのような点に気を付ければ良いのでしょうか。せっかく環境に配慮した印刷物を作るのですから、その効果を最大限に引き出し、スムーズに進行させたいものです。
この章では、環境配慮型印刷を依頼する際に押さえておきたい「用紙選択のポイント」、「発注前の確認事項」、そして「印刷会社との連携で品質を確保する方法」について具体的に解説します。これらの注意点を事前に把握しておくことで、より満足度の高い環境配慮型印刷を実現できるでしょう。
用紙選択のポイント
エコ用紙は多種多様であり、それぞれの特徴を理解した上で最適なものを選ぶことが重要です。以下の点を考慮して用紙を選びましょう。
- 目的と用途を明確にする:
- どのような印刷物を作成するのか(名刺、パンフレット、報告書、ポスターなど)。
- どのようなメッセージを伝えたいのか(環境配慮を強くアピールしたいのか、高品質を保ちつつ環境に配慮したいのか)。
- 使用される環境(屋内、屋外、水回りなど)や、耐久性は必要か。
例えば、企業のSDGs報告書であればFSC認証紙や再生紙100%の厚手の紙、屋外で使うポスターなら耐水性のあるLIMEXなど、目的と用途に合った用紙を選びましょう。
- 品質とコストのバランスを検討する:
- FSC認証紙は品質が安定していますが、再生紙に比べてコストが高い傾向があります。再生紙は品質にばらつきがあることもありますが、コストを抑えたい場合に有効です。
- 事前に用紙サンプルを請求することを強くおすすめします。実際に手に取って色味、質感、厚みなどを確認することで、印刷後のイメージとのギャップをなくせます。多くのネット印刷会社で無料サンプルを提供しています。
- エコマーク表示の可否を確認する:
- FSC認証マークやグリーンプリンティングマークなどを印刷物に表示したい場合は、対応している用紙と印刷会社を選ぶ必要があります。特にFSCマークはCoC認証を持つ印刷会社での印刷が必須です。
- デザインデータ作成時に、これらのマークをどこに、どのくらいの大きさで配置するかを検討しておきましょう。
用紙選びは、環境配慮型印刷の第一歩であり、最終的な仕上がりに大きく影響します。時間をかけてじっくり検討しましょう。
発注前の確認事項
印刷を依頼する前に、以下の項目をしっかりと確認しておくことで、トラブルを未然に防ぎ、スムーズな進行に繋がります。
- 対応しているエコ用紙の種類と在庫:
- 希望するエコ用紙が、利用したい印刷会社で常時取り扱っているかを確認しましょう。特に特殊な用紙の場合、取り寄せに時間がかかったり、在庫がない場合もあります。
- 環境配慮型印刷技術の対応状況:
- ノンVOCインキや水なし印刷など、用紙以外の環境配慮を求める場合は、その技術に対応しているかを確認しましょう。ウェブサイトで「環境への取り組み」や「サステナビリティ」のページを確認するか、直接問い合わせてみましょう。
- エコマーク表示の可否と条件:
- FSC認証マークやグリーンプリンティングマークなどを表示したい場合、その印刷会社が該当する認証を取得しているか、また表示するための具体的な手順や費用、デザイン上の制約などを確認してください。
- 費用と納期:
- 通常印刷と比較して、費用がどれくらい変わるのか、納期はどの程度長くなるのかを明確に確認しましょう。特に、納期に余裕を持ったスケジュールで発注することが重要です。
- データ作成時の注意点:
- 再生紙など一部のエコ用紙は、通常の紙と比べてインキの吸収性が異なったり、色味が沈みやすかったりする場合があります。印刷会社が推奨するデータ作成のガイドライン(例:画像の色調整、グレースケール変換時の注意など)があれば、それに従いましょう。
- 不安な場合は、色校正(試し刷り)を依頼することをおすすめします。
これらの確認事項をリストアップし、印刷会社とのコミュニケーションを通じて一つずつクリアにしていくことで、安心して発注できるでしょう。
印刷会社との連携で品質を確保
環境配慮型印刷の品質を確保するためには、印刷会社との密な連携が不可欠です。ネット印刷の場合でも、疑問点や要望は積極的に伝えるようにしましょう。
- 具体的な要望を伝える:
- 「環境に配慮したい」という漠然とした要望だけでなく、「FSC認証紙を使いたい」「植物油インキで印刷したい」「この印刷物にはFSCマークを表示したい」など、具体的な要望を伝えましょう。
- 用途やデザインの意図も共有することで、印刷会社も最適な提案をしてくれます。
- 色校正やサンプルを活用する:
- 特に初めてエコ用紙を使用する場合や、色味にこだわりがある場合は、本紙・本機校正(実際に使用する紙と印刷機での試し刷り)を依頼しましょう。これにより、最終的な仕上がりを正確に確認できます。コストはかかりますが、後からの修正や刷り直しを避けるためには有効な手段です。
- 過去の環境配慮型印刷の事例やサンプルがあれば、見せてもらうのも良いでしょう。
- 進捗状況を適宜確認する:
- 納期に影響が出ないよう、必要に応じて印刷の進捗状況を確認しましょう。特に、特殊な用紙の取り寄せや工程が入る場合は、通常よりも余裕を持った確認が必要です。
- 環境への取り組みについて理解を深める:
- 印刷会社のウェブサイトにある「環境への取り組み」や「サステナビリティレポート」を読んでみるのも良いでしょう。その会社の環境意識や、どのような認証を取得しているかを知ることで、より信頼できるパートナーを選べます。
印刷会社と協力し、丁寧に進めることで、環境に優しく、かつ期待通りの品質の印刷物を手に入れることができるはずです。あなたの「地球に優しい選択」が、具体的な形となって世に出ることを願っています。
次章では、これまでの内容を踏まえ、環境配慮型印刷に関するよくある質問にお答えします。
よくある質問(FAQ)
FSC認証紙と再生紙の違いは何ですか?
FSC認証紙は、適切に管理された森林から伐採された木材や、FSCの基準を満たすリサイクル材料から作られた紙です。森林破壊を防ぎ、生物多様性を保全するなど、環境的・社会的に責任ある森林管理を支援していることが国際的に認められています。一方、再生紙は、一度使用された古紙を回収し、それを原料として再生産された紙です。資源の有効活用と廃棄物削減に貢献します。
大きな違いは、FSC認証紙が「森林の持続可能性」に焦点を当てているのに対し、再生紙は「資源の循環利用」に焦点を当てている点です。FSC認証紙は新品のパルプを多く含むため品質が安定していますが、再生紙は古紙の配合率によって色合いや質感が異なります。
FSC認証紙を使うメリットは何ですか?
FSC認証紙を使う最大のメリットは、環境保全への明確な貢献と企業イメージの向上です。FSC認証紙を選ぶことで、違法伐採の防止や森林の持続可能な管理を支援し、地球環境保護に貢献できます。また、FSC認証マークを印刷物に表示することで、企業が環境問題に積極的に取り組んでいる姿勢を明確にアピールでき、消費者や取引先からの信頼獲得、ブランド価値向上に繋がります。
環境に配慮した印刷方法にはどのようなものがありますか?
環境に配慮した印刷方法は用紙の選択だけではありません。主に以下の方法があります。
- ノンVOCインキ(植物油インキ・UVインキ): 大気汚染の原因となる揮発性有機化合物(VOC)の使用を抑えたインキで、環境負荷を低減します。
- 水なし印刷: 印刷工程で水を使わないため、有害な廃液の発生を抑え、水質汚染のリスクを低減します。
- CTP(Computer To Plate): 印刷版を直接デジタルデータから作成する技術で、従来の製版フィルムや現像液が不要になり、廃棄物を削減します。
これらの技術は、印刷過程での環境負荷を減らすだけでなく、品質の安定化や納期短縮にも寄与する場合があります。
再生紙の印刷で注意すべき点はありますか?
再生紙を印刷に使用する際には、いくつかの注意点があります。古紙の品質や配合率によって、紙の色合いがわずかに灰色がかったり、黄ばんだりすることがあります。そのため、写真やフルカラー印刷では、発色が通常の紙と比べて若干沈む可能性があります。また、古紙の繊維は短くなるため、紙の強度がバージンパルプの紙より劣る場合があります。これらの特性を理解し、特に色味の再現性を重視する場合は、事前にテスト印刷や用紙サンプルで確認することをおすすめします。最近では技術の進歩により、高品質な再生紙も増えていますので、印刷会社に相談してみるのも良いでしょう。
まとめ
この記事では、企業や個人のSDGsへの貢献と企業イメージ向上に繋がる「環境に優しい印刷」について深掘りしてきました。
改めて、その要点を振り返りましょう。
- SDGs時代において、環境配慮型印刷は企業の社会的責任を果たす上で不可欠です。
- FSC認証紙は森林保全とトレーサビリティを保証し、再生紙は資源の有効活用に貢献します。
- ノンVOCインキや水なし印刷など、用紙以外の環境負荷の少ない印刷技術も進化しています。
- 印刷物にエコマークを表示することで、環境への取り組みを効果的にアピールできます。
- ネット印刷を活用すれば、手軽にエコ用紙を選択し、環境配慮型印刷を実践できます。
環境に配慮した印刷物の選択は、未来の地球、そして社会への「地球に優しい投資」です。単なる印刷物の制作に留まらず、持続可能な社会の実現に貢献し、あなたの企業やブランドの価値を高める強力な一歩となるでしょう。
さあ、今日からあなたの印刷物で、地球と未来へのメッセージを発信しませんか?ぜひこの記事で紹介したネット印刷会社を参考に、あなたの想いを形にする第一歩を踏み出してください。
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